Anatoly AKUE

ロシア出身のコンテンポラリーアーティスト。躍動するレタリングと仏教の信仰とメディテーションから体得した静謐な世界観を色彩や作品のテーマに映し出す才能溢れるアーティスト。

1986年に旧ソ連モスクワで生を受けた Anatoly AKUE は1997年からグラフィティを始め、2000年代にはヨーロッパのグラフィティシーンの中で頭角を表す。Write 4 gold finalやMeeting of styles、Step in the arena といった権威あるフェスティバルでの交流によってグラフィティのメインストリームでの支持を磐石なものにしてきた。 しかし現在のAKUEの作品はストリートの感性や定義に縛られず、本人が長きにわたり信仰してきたチベット仏教の考えや、彼がライフワークとしている禅の教え、メディテーションなどの経験から着想を得たコンセプチュアルな世界観が特徴的である。 彼の作品では擬人化した文字(レタリング)が重要な役割を果たしておりありふれた日常の中に見え隠れする繊細な感情の変化を、文字を通して表現する。解釈の幅が広がる作品は次第に抽象画へと進化していく。 「自分の抽象画を観る人に純粋な喜びやメディテーションとしての効果を与えたい」とAKUEは語る。鑑賞者一人一人の解釈が異なり各々の中で物語や意味を感じ、発見することができる繊細で深淵な魅力を持つ作品を発表し続けている。 東京/浅草で彼が描いたのは浅草九倶楽部という劇場やホテルスタジオが一体となった浅草の新しいカルチャースポット。その中の「浅草九スタ」(www.asakusa9st.com)のシャッターを自由に使い、若い作家の表現活動をサポートできるような役割をもたせたいとこの施設の関係者からご依頼を頂いたところがきっかけだった。 AKUEは浅草の街と、周囲に点在するお寺や歴史ある建物を訪問し、彼の中で作品へのイマジネーションを膨らませていった。 彼は蓮や庭園、傘を連想させる抽象的なモチーフを加えながらもレタリングを主役にした自分自身のスタイルを存分に表現した。 たった2日間、正確には10時間程度で完成させた。AKUEのケースでは特に本人には注文や要望を伝えず、アーティストに任せたが、その結果実物の作品のエネルギーや臨場感が伝わってくる力強い作品が出来上がった。