DIDIER JABA MATHIEU

ヨーロッパを代表するグラフィティアーティスト/コンセプトアーティスト。
多彩な表現力と独自の写実的なスタイルで観る人の心のに刻まれる印象深い作品を描いている。

ベルギー人の科学者であり教授であった父とコロンビア人の母を持つJABAはコロンビアのアルメニアで生まれた。彼の生まれた環境は彼が物心つく頃にはテロリストとドラッグカルテルと強硬派の軍との戦地と化し、彼の両親は悪化を辿る国の情勢に息子たちの将来を案じJABAが14歳の時に祖国のベルギーに移住させた。 JABAが移住した80年代後半のベルギーではグラフィティの文化がアメリカやドイツから伝わり、ベルギーという小国でも多くの若者がこの文化に傾倒しフランス、オランダなどの隣国と凌ぎを削るようにしてストリートの違法行為が芸術的に評価され大衆の生活にも浸透し始めた時代であった。 彼はベルギーのリエージュでアートを専攻しイラストレーションを学びながら同時にそのスキルやクリエイティビティをグラフィティのスタイルに落とし込みシーンが成熟し彼が大人になる頃にはJABAはベルギーのグラフィティ界の主要人物となっていた。2000年代に入ると国境を越えてスペイン、ドイツ、ベルギー、そしてフランスのグラフィティシーンのトップアーティストが集まり「ULTRA BOYS(UB)」というクルーを結成する。JABAはその中心人物として世界中からリスペクトと注目を集める存在となった。 社会的な面ではJABAはルーカスフィルム社の「特殊効果」部門「ILM」のコンセプトアーティストに就任しシンガポールに移住しトランスフォーマー、スター・トレック、アイアンマンなどの作品に携わってきた。彼はSFや未来の風景を形にするコンセプトアートにおいても世界的なアーティストであり、その感性やスキルがJABAの柔軟な表現力を支え、イマジネーションを形にし現実の世界で様々な作品を描くことに大いに役立っている。 THE CHIKURA UMI BASE CAMPで描かれたこの作品も、いくつかの提案を経てから辿り着いたクライアントとそこで働く人々の想いを反映させたものになった。JABAは現場に到着してからも最後まで関係者と議論を重ね、様々な意見や提案を受け止めその意向に沿うことを目指し制作に臨んだ。 多彩な表現力と深く穏やかな感受性で街や地域のアイコンになるような「調和」を生み出す力を持った作品をJABAは描き続けている。